広告効果の諸相 Perspective of Ad Effectiveness

前回のポストで、広告効果をどう測るか、は、広告効果をどう定義するかと不可分だと書いた。では広告効果とは何なのか?

実務的・経営的視点に立てば、Business Results(つまり売上や利益)に対する広告の寄与、あるいは広告投資に対するビジネス上の成果(ROI)といったものが望ましいものとなろう。

しかし、広告効果を直接的な売上や売上に直結する行動(すなわち購買)という枠に閉じ込めてしまうと、広告を行う目的が極めて短期的で直接的なもの、すなわち消費者に「いかに買わせるか」を追求するものになる。広告は買わせる手段にすぎない、という割り切った考え方は、消費者(広告の受け手)にそれが伝わると警戒心、忌避感や嫌悪をまねき、広告という手段の有効性を損ねる。前のポストで紹介したディスカッションの冒頭でも、司会者が会場に対して「どんな形式であれ広告大嫌いな人どのくらいいますか?」と手を上げさせていたのが印象的だった。

改めて広告効果とは何か、を自問してみると、ブランドに対して正(または負)の影響を及ぼす要因という答えがぼんやりと浮かんだ。結果として、コミュニケーション効果だったり、売上高だったりということになる。しかし、これでは幅広すぎる。古典的なS-R(刺激と反応)で考えたときの、Sだ、としか言っていないのと同じである。

広告効果とは何かについて、インターネット上で誰でも読めるものから探ってみると2つの日本語論文が見つかった。一つは2000年に書かれた「広告とは何か」(田中洋)、もう一つは2011年に書かれた「広告効果研究をふり返る」(岸志津江)である。二人の著者はともに広告業界ではよく知られた、現役の研究者である。

田中論文は、インターネット広告がまだ市場として立ち上がる前に書かれていたものだが、問題意識としては、広告はなぜ有効なのかということを解明しなければ、広告効果についての解決はあり得ないだろう、というもの。ここで田中は、ブランド論がまだ盛んでなかった1991年に上梓した「新広告心理」(電通刊)の中に提示した「消費者が広告に含まれる商品情報をどのようにしてみずからと関係づけて効果を発揮するか」、という視点を踏まえ広告効果は次の二つだと結論づける。

広告効果とは、(1)ブランドが消費者の中に形成され、購買行動生成の前提となる準備状態が醸成されること、(2)その準備状態が購買意思決定の過程で効果的に作動すること。というプロセスのことである。

これは、概念としてはわかりやすく正しいと思うが、これを測ろうとするとより下位の要因に分解することが必要になる。

岸論文は、2011年に至るまでの広告効果研究をハンディに総括し、課題を整理した優れて利便性の高い論文だと思う。広告効果については、文中に表2として、効果の段階と基準としてまとめられているので、ここに転載する。これは、広告の送り手から見た効果の指標となり得るものである。したがって、広告の目的に沿ってそれらを測定すればよいわけだが、一つ一つに、そしてその都度測定の問題点や課題が存在する。例えば、売上への広告の寄与度を解明するためにマーケティング・ミックス・モデルが米国ではよく利用されていることが論文中の表4を見ればわかるが、この方法は専門の会社に委ねるとかなりの費用と結果がでるまでの時間がかかる。

AdEffectivenessCriteria

これらの多様な指標にどう取り組むか、はマーケティング戦略と不可分である。

さらには、こうした指標を扱うこと、すなわち広告を扱うことには、広告の送り手の消費者観、人間観が問われるのである。田中論文からもう一つ引用しておこう。

私たちは広告効果を、あたかも消費者を「コントロール」するかのごとく扱ってはいけない。それは倫理的にそうであるだけではなく、消費者のアタマに広告の記憶を「埋め込み」、それが購買時点で機械的に思い出され、購入意図を刺激する…という広告を実施する側に有利なイメージを抱いては正確な広告効果の理解ができないからである。

広告オーディエンスを標的(ターゲット)として、どこまでも追いかけて存在をアピールすることは、消費者を露出頻度によって動かせる(つまりはコントロールできる)、という観点を露呈したものだ。

インターネットの普及とともに、オンラインの広告効果測定が当然のように行われていることは画期的であり、PDCAサイクルを回しながら効果を高め、費用対効果も部分的には実証できるようになったことは喜ばしい。しかしそれはあくまでもマーケティングプロセスのごく一部に過ぎない。長期的なブランド構築という広い視野に立つこと、さまざまな経路や手段を使い、表現に工夫を凝らして連携をはかることなどが必要になる。広告効果指標の幅広さは、そのままマーケティング・コミュニケーションの奥深さに通じている。

広告

大下文輔 について

Communication Strategist, Freelance
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