広告効果測定の闇 Measuring Ad Effectiveness in Darkness

広告、とりわけオンライン広告の世界には、明るく力強く、「デジタルの時代になって広告効果が測れるようになったんです」と言う人がたくさんいる。彼らの多くは迷いも疑いもない。曰く「だって、広告をクリックして買い物かごに入れたと言うことは、その広告を見たと言うことと買ったと言うことが繋がっているから、広告効果があったとわかるじゃないっすか。」

だが、Tech Crunchが報じた、Twitter、Facebook、Googleの広告担当幹部のディスカッションを見る限り、広告効果が測れると言い切るには、よほどの度胸が必要だとわかる。テクノロジーの申し子のような彼らも、悪戦苦闘を続けているのである。

広告効果とは何か。そして、それをどう測ればいいか。

論理的には、前者の質問に実務上意味のある明確な定義が与えられ、そのための実行可能な測定方法が提示できれば、一件落着である。だが、これに答えようとすると、専門書一冊ができあがる。そしてなお、上記のディスカッションでGoogleのNeal Mohan(ディスプレイ担当VP)は、「効果の測定はデジタルブランド広告に立ちはだかる最大の障碍である」と述べている。

記事の表題からして、clickの価値について激論、とある。つまりは、clickという行為あるいは測定単位が、広告効果測定に占める位置についてまだコンセンサスが得られていない、ということに他ならない。

このディスカッションでも概ね合意されていることは、広告効果とはresult、すなわち商品・サービスの売上に対して、広告したことがどの程度影響をもたらしたのか、ということである。いくつのクリックが生起されたか、などは広告主の最も知りたいことではない。広告費をどれだけかけたら、どれだけ売上に効果があったのか教えてくれ、なのである。だから、clickは目的変数ではなく、媒介変数または説明変数としてどう扱われるべきか、がディスカッションの対象になるわけだ。

Facebookは、clickは重要ではない、という立場をとる。Click数と売上との間に連関がない、というのがその論拠。オンラインで広告する商品の多くは、オフラインでも買える。だから、オンラインで広告をしたことが、オンラインとオフラインの両方でどれだけの売上につながったかを測る(推計する)ことが大事になってくる。そのために、Facebookは広告を見た人がどれだけ買ったか、をPOSデータなどを使って精緻に推計することに長けたDagital Logixを買収した。かれらにとって、最も重要な指標はImpressionである。(もっともオンライン部分のキャンペーン効果測定にも手を抜くわけではなく、彼らはAtlasに投資することを決めている。) 彼らのアプローチを一言で言うと、売りに繋がる最も重要な要素についてのみ着目し、その間のものはブラックボックスとして扱うというものだ。すごく乱暴に思えるが、実際にはかなり有効ではないかと僕は見ている。

これに対して、Googleは最終的なConversionを重視する。広告によってオンラインでどれだけの売上に繋がったかに対してきっちりと答えを出せば良いという立場。ただ、最終のconversionに繋がる複数の経路を考慮に入れ、それぞれの経路のそれぞれの段階で細かくコントロールが効くようにしている(Multi-Channel Funnels)。Conversionに直接かかわるlast clickは、測定単位として重要になる。彼らのアプローチは、はっきりしている部分、測定できる部分については、できるだけ追っていこうというもの。オンラインの経路が何にも増して重要な商品なら、このアプローチは意味があるだろう。

Twitterは広告サービスの招待制を廃止し、セルフサービスの広告プラットフォームを一般に公開した(本日時点で米国のみ)。まだ、広告の規模も小さく、広告ビジネスはこれからだが、彼らが目指しているものは、Tweetという一つのフォーマットを核としてよりRichな広告コンテンツをシェアすることによって、Engagementを高める方向に集中すること。彼らにとっての広告効果測定とは、最終売上やコンバージョンよりもむしろEngagementを測ることに重きが置かれることになる。

ここで見逃せないのは、ディスカッションの裏側に、彼ら自身がどのように収益を上げていくかという課題が広告効果測定のあり方に関わっていることである。それは、広告効果を測る、ということの定義自体も操作的に行えるものであることを意味する。

実は売上やconversionという目的変数に関しても、本来操作的に定義しないとおさまらない。たとえば、キャンペーン終了後10日以内なのか、3ヵ月以内なのか、1年以内なのかを決めないと測定終了できないのである。操作的に決めなくて済む場合というのは、広告効果がいつまで続いたかがわかっている場合であるが、効果の程度を知るための測定をしようとしているのに、いつまで続くかは予め決めることは明らかな矛盾である。

広告露出は、オンラインで完結しないものも多い。さらに、広告以外の要因も売上に何らかの正負の影響を及ぼす。気温が上がればビールは売れるし、鳥インフルエンザが流行れば鶏肉の売上は落ちるだろう。つまり、広告効果を測ることは、広告以外の効果を測ることでもある。そして、それらは複雑に絡み合う。流通経路、評判、棚の位置、PR、ニュース、イベント、プロモーション、景気、季節性等など。

個人個人の置かれた状況によっても、広告の効き方はさまざまである。給料日、万馬券を当てた、酒を飲んだ、彼女にねだられた、子供の頃に食卓に出た、ショーウィンドウで見た、店員にすすめられた、引っ越した、商品を見てカワイイと思った等など。

クリック一つ、売上数字一つをとっても、統制不能な要因が山のようにある。広告をしなかった場合、した場合、の二つで比較できればいいが、広告以外の条件を同等になるように設定するのは簡単なことではない。そして広告それ自体も、過去の蓄積効果がどの程度残っているかがわからないと、正確なキャンペーン評価をしたとはいえない。

結局のところ、測定の方法や過程を複雑にしても、さまざまな要素をコントロールできない以上、何が測れたのかは、わからないまま残る。同時に、マーケティングの目的が最終的には売上であるにしても、そこで投じられる広告が必ずしも売上やサブスクリプションにつなげようとしているものか、当事者以外にはわからない場合もよくある。例えばこのGoogleのコマーシャル。何をもって広告効果が上がったと言えるのか。(すなわち目的は何か)。そのために投じた金額はどのくらいか。など、外部からは当て推量するしかない。

広告効果とは何か。そしてそれをどう測ればいいか。

それは永遠に未解決のまま残されるはずだ。しかし、それに迫ろうとさまざまなアプローチは、間断なく続くだろう。ある銘柄のXか月後の株価を知ろうと、常になにがしかの予測が求められるように。

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(追記)元記事に書かれたディスカッションについての、日本のプロフェッショナルの見解を知りたいと思う。

蛇足だが、Tech Crunchの記事の中にある「閉じ込もって考えるのをやめる」とあるのは、「(広告キャンペーンを)個別の経路で考えるのはやめる」というほうがより正確。モバイルやPCなど、はたまたオフラインとオンラインなど個別に予算をつけてコントロールすべきでない、ということを指しているはずだ。

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大下文輔 について

Communication Strategist, Freelance
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