オンライン広告考3 Automated Online Advertising Curation

自分のPCディスプレイに表示される広告群をつらつら眺めると、有り体に言って荒んだ感じになっているのに気づく。ダイエット関係、整形関係、老化防止や健康関係、楽天などの通信販売の価格表示のオンパレードである。今はどこに行っても太った女性の太鼓腹と49歳、-29cmというバナーにお目にかかる。もちろんその他の広告もあるけれども、目立つのは上述のカテゴリーのものばかり。

これらは、基本的にオーディエンスの劣等感や恐怖に対して働きかけるものか、今すぐ買ってくれと言う主張である。脅し広告と呼ばれるものの比率が、オフラインのメディアにくらべて格段に高い。行動リターゲティング(リターゲティング)によって、これが、どのサイトにおいても似たような傾向を示す。

ある広告が、どのサイトにおいても似たようなフォーマットで掲載されると言うことは、レガシーメディアにおいては事実上、ほとんど起こり得ないことだった。ニューヨークのニューススタンドで買ったニューヨークタイムスの題字下に、怪しげな通信教育やらダイエット法の広告が、しかも日本語で、クオリティの低いビジュアルや大きな字で値段の書いてあるようなものを毎回目にするのは、ちょっと考えにくい。

つまり、クオリティペーパーと呼ばれるものなど、「メディアの格」というものが存在し、その紙面の物理的な有限性によって、あるいはメディア(媒体社)による考課を経て、自ずとそこに掲示される広告の種類に制限がかかっていたわけだが、アドネットワークによる機械的配信を許容するオンラインメディアではそうした暗黙のルールは崩れている。

こうしたことは、多くの情報サイトが無料で公開されていることと無縁ではなかろう。無料の情報提供を当たり前と感ずる消費者から、有料の購読による収益性が期待できないのに、武士は食わねど高楊枝を決めるわけにはいかない。無料であることと、個人データを秘匿することを同時に要求する傾向について「消費者はずうずうしい」とルディー和子は言い切っている

では、今のレベルの個人情報も提供し、情報源に対してサブスクリプションコストを払えば、こうした混沌から脱却できるのだろうか。僕はそれについて楽観視していない。

一つは、今の行動トラッキングは、消費者の心的状態とその変化について敏感ではないと思われるからである。実例に即して言うと、掃除機の買い替えが必要になったため、掃除機の性能や価格に関して調べていた。調べている間はそれなりに関心高まり、いくらで買えるかも情報として有益だったが、それを購入した時点から、掃除機の情報は自分にとって用済みとなった。買った後で、それよりも安い価格で売っているという情報を広告を通じて延々と目にするのは迷惑なだけである。

もう一つは、それぞれの広告主は自社の商品やサービスについての個別最適を図ろうとし、広告主ごとの競争に際しては、自然と声の大きい(広告費の多い)広告主の商品やサービスが、一人のオーディエンスをめがけて発信されることになる。広告主が、見込み客と思われる人をあぶり出し、その人達に自分たちの広告が数多く露出される以上のことを望むことはないだろう。フリークエンシー制御をかけるという措置を施したとしてもである。

こうしたことを回避するためには、一つには有料の購読者増を増やすために(あるいは増えた結果として)、当該メディアの純抗告枠比率を上げて考課(統制)を強化することが対策の一つになるだろう。

二つ目はFacebookのように、媒体内で提示される広告について個別に表示Offにする機能をつけるということである。これは、Noの意思を伝えられる、という点はいいけれど、面倒を背負い込むことでもある。

三つ目は、メディア横断的な観点から、頻度のみならず、一人のオーディエンスに対して発信される広告の種類の裁定や調整(一定時間における広告露出のミックス)を行うメカニズムを導入することが挙げられる。ここでは、単なる概念提示しかできないが、ニュースのキュレーションサービスのような広告のキュレーションサービスを考えてみたい。

あるオーディエンスがたとえば一日という時間軸の中で、オンラインサイトでの閲覧に際し、その人に発信される広告の種類や頻度や媒体を決めるアルゴリズムを用意する、というものである。例えばその人に配信されているGunosyの記事、といったより第三者的な情報源からその人の関心領域を推定し、関連するモノやサービスとのマッチングを図る、といったことが考えられる。(単なる例示なので著作権云々の議論はさておくものとします。)広告をオーディエンス単位で取扱うことにより、より、広告の受け手にとって「広告露出環境」がよいものになると実感されそうであれば、そのサービスはfeasibleだと言える。

その人の関心のありようをこまめに探る仕組みや、広告の受け手の快・不快のフィードバックループを確保するなど、まだまだ物足りないなあと一オーディエンスとしては感じている。

他方、そんなの承知の介で着々と物事は動いているような気もするが。

広告

大下文輔 について

Communication Strategist, Freelance
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オンライン広告考3 Automated Online Advertising Curation への1件のフィードバック

  1. ピンバック: Gunosyのおもしろさ | TA EIS HEAUTON

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