良いゲーム化、悪いゲーム化

漠然と、ゲーム化にもよいものと悪いもの、があるだろう、と思っていた。

昨日(2011年11月25日)行われたゲーミフィケーションセミナーで、「悪いゲーム化」についての考え方と、それを避ける方法が。ここでいう、良い、悪いというのはゲーム化を施すことによって、あるブランドが消費者の信頼を得ながら、エンゲージメントを良い方向に強化しうるか、あるいは(モノは売れるかも知れないが)、消費者の不信や不満や混乱を最終的に招いてしまうことになるか、を指す。

(よくできた)ゲームは、本業、あるいは今しなければならないこと、をおろそかにしてのめり込んでしまうほど強い誘因力がある(*)。ゲーム化がマーケティングの強力なツールになる、と思われているのは、こうしたゲームの持つ誘因力、行動喚起力を活かして、消費者の行動変容を「望ましい方向に」促すことができる、との信念があるからだ。ドーパミンの分泌が活発になる云々の話を待つまでもなく、ゲームに依存症を引き起こすような強い作用があることは誰しも認めるところだろう。良く効く薬は、使い方によっては毒にもなる。

行動変容、例えば、検討の段階から購買へといったことは、製品やサービスの提供者がずっと追い求めてきたことだ。そこにゲームのメカニズムを導入すれば、相応の効果が得られるだろう、というのがゲーム化に対するビジネスサイドの期待だ。

ゲームという効力の強い処方によって、マーケティング効率をあげようとするわけだから、僕はその対象となる消費者から、それなりの警戒感が生まれるのではないか、と考えていた。マーケティングという分野そのものに対するある種の警戒感は、常につきまとう。それは、マーケティングが、程度の如何はともかく、消費者を直接的・間接的にコントロールできる、という信念の上に成り立っているからだ。これは、例えば心理学の立場から、「サブリミナル・インパクト(下條信輔)」などにおいて提示されている懸念でもある。

2011年4月にリリースされた、ガートナーのレポートによれば、2015年には大企業2000のうち70%がゲーム化を活用すると予想されている。これはゲーム化への期待の大きさと急激な盛り上がりの証でもあるのだが、それは同時にゲーム化という「強い薬」に対する警戒感を生むのではないかとも考えられる。それについてどうか、とスピーカーのGabe Zichermannにきいた。

彼の答えは、そういういう疑いを持つ人はいるが、それに対してなすべき事は、透明性を確保することだ、ということだった。なるほど言われてみればその通りだ。透明性の確保は、少し前にステルスマーケティング、つまり利害関係者が自らもしくは第三者への報酬を伴う依頼により、自社のブランドへの好意的な、あるいは競合製品に対する非難をするなど、匿名による利益誘導を目的としたもの、に対する批判が起こったときに提示された対応策だ。

ゲームのメカニズムをマーケティングに応用しよう、とするとき、「誰が」そのゲーム、イベントあるいはプログラムを実施しているのか、そのイベントやプログラムはどのようなものか、は最低限消費者に伝わっていないといけない、ということだ。それがなければ、ゲームのメカニズムを利用したステルスマーケティングそのものになってしまう。そして、それは、悪いゲーム化である。

悪いゲーム化、はおそらく次のようなものになるだろう。
■広義には消費者にいずれかの時点で、不信、不満、疑念を呼び起こすもの
■より具体的には、次のいずれかを満たすものである:

  1. プログラムやイベント(以下プログラム)の主催者として関わる企業の存在を明示しないもの
  2. そのプログラムが、参加者に対し、どのような動機付けで、どのような行動変容を期待しているかが明らかでないもの
  3. そのプログラムが 、参加者と主催企業ににそれぞれどのような便益をもたらすものかがわからないもの
  4. 参加者に、ネガティブなフィードバックを与えるもの

逆に、よいゲーム化とは次のようなものになるだろう
■消費者にブランドに対する愛着(Engagement)を築き、強化するもの

  1. 参加者に、ポジティブなフィードバックを与えるもの
  2. 参加者の便益と、主催企業の狙い、便益がはっきりしているもの
  3. 参加者に、動機付け、報酬、ルール、フィードバックが明らかにされているもの
  4. 主催する企業の存在と名前が明示されているもの

この良いゲーム化は、基本的に必要条件である。ビジネスサイドから見れば最終的にこれらを満たした上で、Engagementにつながる、他のマーケティングKPI、例えば利益をも向上させるものということになろう。

蛇足だが、情報の公開(透明性)を巡って面白い考察があった。ネタではあるが。 もしストリートビュー撮影車のスケジュールがあらかじめわかっていたら(山口浩)

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大下文輔 について

Communication Strategist, Freelance
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